伝統ある酒蔵の
日本酒を
世界へと広める
リブランディング
山梨銘醸株式会社リブランディング

Client
山梨銘醸株式会社
Credits
1750年(寛永3年)の創業以来、甲斐駒ヶ岳の麓で地の水をいかした酒造りを続ける酒蔵「七賢」。そこで生まれる日本酒の魅力をより広く、遠くへ届けるために。母体である山梨銘醸株式会社の依頼を受け、海外展開も見据えたリブランディングを実施。新ブランドスローガンを起点に、WEBサイト、ブランドムービー、カタログまで、“選ばれる一杯”となるための一貫した世界観を構築しました。
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新たなブランド像をスローガンに
はじまりは、Webサイトリニューアルを中心としたご依頼でした。しかし代表にヒアリングを重ね、リニューアルをご希望される背景や、これからの「七賢」が目指すべき立ち位置を整理するなかで、全体のブランディングへと構想が発展。伝統と革新を併せ持つ海外ハイブランドをベンチマークに、外部のコピーライターも交えたブランド像の再定義をスタートさせました。


写真:
ブランドの未来を見据えたコミュニケーション戦略のもと、新スローガンを提案。
課題となっていたのは、より高付加価値なブランドとして、従来の日本酒らしさにとらわれない飲用シーンやターゲットを開拓すること。既存のお客様を大切にしつつ、若い世代や海外市場も見据えて “飲まれ方”自体を変えていく必要がありました。そうしてターゲット像やタッチポイントを絞り込むうちに浮かび上がったのが、シャンパンのように楽しめる“泡の日本酒”というイメージを強化する方針です。



写真左:
“ワイングラスで飲みたくなる日本酒”という個性を、洗練されたイメージカットで表現。

写真右:
多様な人々が都会的な雰囲気の中で、「七賢」の日本酒を楽しんでいるシーンを撮影。
ラグジュアリーな場面で、一杯目に選びたくなる日本酒を目指して。ご提案により決定した新スローガンは、「MAKE SPARKS」。華やかな“泡=Sparkling”のイメージとともに、さまざまな料理や場面、人との出会いによって日本酒界に活気ある“火花を起こす”という想いを込めています。活動指針も兼ねたフレーズを軸に据えることで、これから進むべき方向がより明確になりました。
View 2
「水」をコアイメージに表現を展開
リブランディングにあたり、企業理念の見直しも実施。以前から大切にしてきた、「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」の考えに、創業時からの酒造の生命線である「水」を加えた「四方よし」を新たに掲げました。さらに、没入感をもってブランドの世界観を伝えるために、「水」を表現の核に据えたブランドムービーを制作。地質学者への取材をもとに、雪や雨が、山々や沢を経由して「七賢」の仕込み水へと至るまでの旅を、美しい自然と酒造りの風景を交えて映像化しています。
ブランドムービー制作では、新たなブランド像を見据えてチームを編成。映像監督にはファッションブランドのクリエイティブを数多く手がける半田淳也氏、音楽監督には映画のサウンドデザイナーとしても活躍する清水宏一氏を起用。澄んだ映像と音楽により、仕込み水が生まれるまでのストーリーを体感的に表現し、チーム一体となって新たな「七賢」の世界を映し出しました。



写真左:
サイトトップには、豊かな自然の中を水が流れるさまざまなシーンを動画で挿入。

写真右:
余白のある上品なレイアウトと印象的なカットで、新たなブランドイメージを醸成。
Webサイトは、コーポレートとECを統合したブランドサイトへ。これまで別構成だった英語ページを日本語ページと同体裁に揃え、新たに中国語にも対応しました。さらに、「七賢」をより遠くへ届けるための活動の軌跡を伝えるコンテンツ「MAKE SPARKS」を開設。フランス料理界の巨匠、アラン・デュカス氏とのコラボレーションや、同氏が世界中で展開する「デュカス・パリ」を「七賢」が巡るワールドツアーのレポートなど、ブランドの価値観をより深く伝える記事を掲載しています。



写真左:
フレンチと「七賢」の豊かなマリアージュを伝える、写真を交えたレポート記事。

写真右:
独自の活動を記事としてアーカイブすることで、ブランドの個性や哲学を伝える。
デザインでは、罫線に頼らないセクションの切り替えや、画像の配置、余白の取り方により、清らかな水がよどみなく流れるような印象を形成。ビジュアルやストーリーを入り口に、ブランドや商品への興味がしぜんと高まる設計を実現しました。
View 3
歴史を抱いて、より広く遠くへ
ブランディングの集大成として、コンセプトブックを兼ねたカタログを制作。映像やWebと同じく「水」のイメージを引き継ぎ、手触りや湿度感にまでこだわった紙選びを行っています。商品写真は、あえて自然光を取り入れて情感のある佇まいに。ラベルを変更せずとも、これまでとは異なる顔つきを演出しました。商品説明では、コピーライターが一銘柄ずつ試飲し、香りや味わいを豊かな表現で描写。日本酒好きの方はもちろん、あまり日本酒になじみのない方にも関心を持っていただきやすくなるよう、商品との出会いに細やかな配慮を施しています。


ブランドカタログの仕様
表紙:サガンGA
本文紙:モンテルキア
加工:消し銀箔


ビジュアルを効果的に使用したカタログでは、甲斐駒ヶ岳の写真を象徴的に配置。
プロジェクト発足時に、目指すべき姿を綿密にディスカッションしたことで、ゆらぎのない一貫した世界観を構築。WebサイトにEC機能を導入する際には、現場でのオペレーションをふまえて負荷の少ない選択肢をご提示するなど、持続可能なブランドデザインを心がけています。創業300年に向けて、これまでもこれからも脈々と続いていくブランドの新たな旅立ちをかたちにしました。
Published
2025年8月
Text
丸山 るい(freelance)
国内最大級の選挙・
政治プラットフォームの
運営企業を
ブランディング

イチニ株式会社ブランディング